甘い毒に溺れ堕ちて
優しく気遣う声が聞こえて横を向くと、藍くんが心配そうな顔で私の様子をうかがっていた。



「昼休み、少し顔色悪そうに見えたから」

「あぁ、うん。もう平気。多分急いでご飯食べちゃったからかな」



笑顔を貼りつけて「心配かけちゃってごめんね」と付け足し、教科書とノートを開く。


……なんだ、バレてたんだ。

まぁ、帰ってきたの1分前だったしね。目の腫れも完全には引いてなかったし。

休み時間に話しかけられなかったからって、上手く誤魔化せたと思った自分が恥ずかしい。



「……藍くんは、料理の研究?」



鉛筆を握るも集中できず、レシピ本を読む彼にこそっと話しかけた。

表紙の見出しには、『夏バテを吹き飛ばす! サッパリレシピ』と書かれている。



「うん。梅雨が明ける前にマスターしようと思って」

「暑いと食欲落ちるもんね」

「真彩ちゃんは夏場は何食べることが多い?」

「そうめん、と、おそばかな。元気がある時は冷やし中華とか」

「麺類ばっかりだね」

「ご飯も好きだよ? でも暑い日はサッパリしたものじゃないとなかなかのどを通らなくて」

「わかる。俺の家族も、最近脂っこいものが受けつけられなくなってきてさ。ここ毎日野菜メインのメニューばっかりで……」
< 245 / 249 >

この作品をシェア

pagetop