甘い毒に溺れ堕ちて
虹色の記憶
「成見くん、大丈夫かなぁ……」

「そうだね……」



梅雨明けの発表から一夜が経った金曜日。

1時間目の予習をしつつ、茉耶に相づちを打つ。



「メッセージも、昨日また送ったんだけど、反応がなくて……」

「茉耶もなんだ」

「まあちゃんも?」

「うん。朝と放課後に、1日2回ずつ送ってるんだけど……」



スマホのメッセージアプリを開き、藍くんとのトーク画面を表示する。



【藍くん、おはよう。とうとう梅雨明けしたね〜】
【具合はどんな感じ?】

【今日でテストが全部返ってきたよ】
【現代文の平均点、学年トップなんだって!】

【おはよう藍くん。今日も暑いね〜】
【朝ご飯は食べられた?】



今朝、昨日の夜と朝。

水曜、火曜、月曜と遡るも、私からの挨拶と報告が画面を埋め尽くしているだけで、反応ゼロ。

土日も、両日とも電話に出ることはなく、メッセージも未読のままで……。



「夏バテなのかなぁ。最近また暑くなったし」

「それもあるかもね」



アプリを閉じ、スマホをしまう。


担任からは、『体調不良』としか聞かされていない。

頭痛なのか腹痛なのか、高熱に侵されているのか。詳細は未だに不明。

茉耶の言ったように、単に夏バテをこじらせている可能性もなくはなさそうだけれど──。



『あの人のことは、彼に任せればいいから』

『真彩ちゃんも食べたんだ! めちゃめちゃ美味しかったよね!』 
『じゃあさじゃあさ! 次のデートはアイス食べに行かない?』 



強引に話を切り上げられて、不器用なオーバーリアクションで境界線を引かれたあの日。

私の見立てでは、心因性による体調不良だと思っている。
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