甘い毒に溺れ堕ちて
スクールバッグからスマホを取り出そうとしたその時。ドアの隙間からこちらを覗く人影を見つけた。



『待って! 武藤(むとう)くんっ!』



部屋を出て、立ち去ろうとする背中に呼びかけた。



『……あーあ。まさか撮られてたなんて。ほんと隙がないね、委員長は』



自嘲気味に笑いながら、彼がおもむろに振り向く。


視線の先に佇むのは、毎日「お疲れ様」と労いの言葉をかけてくれたクラスメイト。

私の右腕としても、密かに頼りにしていた副委員長だった。



『どうして……なんであんなこと……』

『……委員長を、助けたかったからだよ』



切なそうに呟かれた理由がチクリと胸を突き刺す。


無理もない。仕事中に時々愚痴をこぼしていたのだから。生真面目で正義感の強い彼の性格を考えると、そういう思考に行き着くのは自然なことかもしれない。



『わかってるよ。俺の一方的な思い込みに過ぎないって。泣き言とか全然言ってなかったし』

『うん……』

『……正直、やりすぎたなって思ったよ。もっと別の方法もあったんじゃないかって、やってすぐ後悔した』
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