甘い毒に溺れ堕ちて
彼は時折、どこか哀愁漂う表情を浮かべていた。


黒髪の頃も、今の髪色になってからも。

まるで人生を悟っているような、ほの暗い眼差しで外を眺める横顔が、妙に印象深かったんだ。


モゴモゴと口を動かしていると、「なにそれ」と鼻で笑われた。



『告白?』

『違うよ! ……嫌いってわけでもないけど』

『じゃあ好きなんだ』

『だからそういう意味じゃなくて……!』



あたふたする姿がツボに入ったのか、くはははっとお腹を抱えて笑い始めた。


──なんだ。ちゃんと笑えるじゃん。


安堵感とギャップを感じていると、彼が目尻を拭いながら近づいてきた。



『占部さん、だっけ。下の名前何て言うの?』

『まあや、だけど』

『どんな漢字?』

『真実の真に、色彩の彩……』



空に指で書いてみせる。


真心を持ち、彩り豊かな人生を送ってほしい。お父さんが付けてくれたの。


思いのほか距離が近く、緊張のあまり、由来に加え名付け親まで話してしまった。
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