甘い毒に溺れ堕ちて
こちらを見向きもしない背中に再度問いかける。


担任には、事前に配られた調査書を通して。

入試の際の面接でも、『保育科か教育科のある学校を志望しています』と同様に話していた。


生徒指導の先生にも相談して、いくつかパンフレットをもらって。

父にも、『説明会に行きたいから着いてきてほしい』と先週連絡を入れたばかりだった。


しかし──。



『お言葉はありがたいですが……なんせ4兄弟なもので。家計が厳しくて』

『私は、就職も視野に入れてみたら? と言っているんですが、なかなか聞かなくて……』



よそ行きの顔、よそ行きの声。

それだけでも虫唾が走った上に、白々しく嘘を並べられて。


一瞬、幻覚を見ているのだろうかと目を疑った。



「約束と違うじゃん。高校では希望聞くって言ったじゃん……っ」



駄々をこねるように服の裾を引っ張る。


幼い命が生まれ、唯一の習い事を手放した小学校時代。

家計が火の車にならぬよう、私立校を諦めて連日勉強に励んだ中学時代。


正直、あぁまたかって思った。

けど、我慢しているのは私だけじゃない。

私1人のわがままで家族を振り回すわけにはいかないから。
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