甘い毒に溺れ堕ちて
正面入口から中に入り、まずは園内をぐるりと1周。

藤の花を堪能した後は、ベンチに座って休憩を取る。



「あ」



隣から漏れ出た声が聞こえた。

茉耶の視線をたどると、小学生くらいの男の子たちがキャッチボールをしている。



「そういえば、風斗くんって野球やってるんだよね?」

「うん。でも最近辞めたの」

「ええっ。どこか怪我しちゃったとか……?」

「いや。なんか塾に通うことになったんだって。私も今月知ったばかりだから詳しいことはわかってないんだけど」



小学校1年生から6年生まで、地元の少年野球クラブに所属していた風斗。

試合は家族全員で、時々茉耶も一緒に、名前付きの応援旗を持って毎年観に行っていた。


卒業と同時にクラブは辞め、中学からは野球部に入ったそうなのだけど……先月あたりから、洗濯物にユニフォームが出されてないことに気づいて。


電話でこっそり父に聞いたら、『高校受験に向けて塾に通わせることになったから』と教えてもらった。
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