甘い毒に溺れ堕ちて
すると茉耶は、「いやいやいや!」と首と手をブンブンと横に振った。



「楽しそうだけど、ルールわかんないし。それに、打ったら1塁? に走らなきゃいけないんでしょう? 応援で充分!」

「それもそうだね」



積み重ねた習慣のおかげか、少し体力が付いて、めでたく中学から授業への参加が認められた。


ただ、激しい運動は変わらず控えてくださいとのことで、マラソン大会は3年間とも欠席。

現在も授業は軽い運動の時のみ参加している。



「……でも、バッティングセンターは気になる」

「わかる。球の速度変えられるって言うしね」

「そう! 野球選手ってこんな感じで打ってるんだ〜って、気分を味わってみたいというか! 打ち返せるかはわかんないけど」

「そもそもバットに当てるのが難しそうだもんね。許可降りたら一緒に行く?」

「いいの!? わーい、やったぁ!」



パアッと瞳を輝かせて、「まあちゃん大好き〜!」と抱きついてきた。甘く柔らかな香りに包まれる。


本当なら別れるはずだった。


茉耶は隣町の私立校を希望していたのだが、『なるべく目の届く範囲が安心だよね』と、ご両親の胸の内を汲み取り、家から1番近いこの学校を受験。

私も、成績こそは問題なかったものの、事情に事情が重なり、やむを得なく第一志望を断念。両親の勧めで、父の母校でもあるこの学校を受けた。



入学式で再会した時は、『なんでいるのー!?』ってお互いに目をまん丸にしたっけ。


出会って10年。今年で11年目の縁。


さすがに大学まで同じにはならないとは思うから、この習慣もあと2年弱かもしれないけれど。

大人になっても、こんなふうに、何気ないことで笑い合えるような関係を続けていきたいな。


頭をポンポンと撫でて、「私も大好き!」と抱きしめ返した。
< 49 / 213 >

この作品をシェア

pagetop