その海は、どこまでも碧かった。
「海、青春してんね
オレはもぉ何年前のことかな…」
ちょっと余裕ぽく言ったけど
胸騒ぎする
20歳になった大人の余裕
海に見せなきゃ
「碧くんにも青春あったの?」
「青春…ないかな…
や…なかったわ、やっぱり」
考えたけどなかった
高校時代はヤローと遊んでた
青春てなんだ?
「碧くん彼女いたことあった?」
「んー、ないかな…」
ないかな…って
ないだろ
「告白されたこともしたこともないの?
なんで彼女作んないの?」
「告白されたことは…あったかな…」
「碧くん、女の子に興味ないの?」
「あるよ
そりゃ、オレだって…
…
オレ、相当理想高いからさ」
「付き合いたいと思えるような女の子に
まだ出会ったことないの?
碧くん、そんな理想高いの?」
「出会ってる…よ…
けど、自分に自信ない
告白したら、なんて言われるかな…って…
ずっと考えてたら青春が終わってた」
今まで何度か告白というものをされた
女の子に興味がないわけじゃなくて
オレが手を繋ぎたいと思うのは
オレが抱きしめたいと思うのは
オレがキスしたいと思うのは
いつも海だった
海以外に興味がなかった
手を繋ぐことは日常茶飯事
ハグもキスも海とはしたことある
なのに
海はオレの彼女じゃなくて
オレの幼なじみでしかない
「オレの彼女になってほしい」
そんな告白したら
もしかしたらこの関係も終わるかも
それだけは
絶対嫌なんだ