その海は、どこまでも碧かった。
「私ね
ホントは風美くんのこと好きだった」
布団から半分顔を出して彼女が言った
「場の雰囲気で言ってるだけでしょ」
「ホントだよ
だから風美くんといつも一緒にいる
女の子のことも気になって
友達に聞いたし…
…
なんか、私の入る余地ないな…って
諦めた
今だから言える話」
今だから言える話なのかもしれないけど
「それを聞いてさ
オレが襲ったらどぉすんの?」
「風美くんはそんなことしない
店長と似てる
優しくて、誠実だから…」
「だいたい人間てオモテは優しいし
男なんてわかんないよ」
「わかんないって?」
「前に好きだったとか言われたらさ
気持ち揺らいで
襲ったりするかもしれないじゃん」
「別にいいよ…
…
私がそう言ったらする?」
別にいいよ
する?
「んー…オレはしないかな…
三咲さんだからとかじゃなくて…」
「やっぱりね!
風美くんもブレなくて真っ直ぐだね
そこが好きなんだけど
みんな私じゃないんだよね…」
彼女は天上を見て言った
海もこんな表情してたな…
告白されて困ってた時
オレを店長に重ねる三咲さん
オレも彼女を海に重ねてるじゃん
重ねてるんじゃなくて
海のことしか考えてないのかも…
「きっといるよ
三咲さんを真っ直ぐに見てくれる人」
「いるかな…」
彼女の声が震えたのがわかった
「泣いてる?」
「…泣いてる」
「どぉして?」
「隣にいる人が…
優しいから…」
「オレのせい?」
「んーん…
私のせい…
…
店長がダメだったから寂しくて…
…
ちょっと風美くんが優しくしてくれたから
触れたいな…って思ってしまった
…
私は真っ直ぐじゃない
弱くて、嫌になる」
「大好きなんだね
店長のこと
…
たまたま店長には奥さんがいて
たまたまオレにも好きな子がいた
…
そぉじゃなかったら
三咲さんと真っ直ぐ恋してたかもね」
「私が先に出会ってたら
好きになってくれたかもしれないの?」
「うん、なってたかもね…」
「風美くん、店長と同じこと言うね」
無責任なことを言ったと思った
「ごめん…」
「んーん…私こそ、ごめんね
…
寝よっか?眠いよね」
「んー…」
「オヤスミ、風美くん」
「うん、おやすみ…」