その海は、どこまでも碧かった。

「碧くん」



「おー、久しぶり…」



碧くんは

部屋でノートパソコンと向き合ってた



「大学の課題?」



「そぉ、そぉ…」



碧くんは私を見ないで

いっぱい文字のある画面とにらめっこしてる



「大学生って楽しそうで
ラクそうだと思ったけど
意外と大変なんだね」



「意外でもないけど…大変…」



「毎週合コンとかしてそうなイメージ」



「ん…」



「碧くんは、そーゆーの行かないの?」



「ん…」



「碧くんが行ってたら、なんか…」



「なんか…?意外?」



「意外でもないけど…
なんか…
ヤダな…」



「ん…」



「あ、行ったことあるんだ」



「ん…
1回だけ、行ったよ」



ホントに行ったんだ



「1回だけ?
なんで、行ったの?」



「なんでかな…
海が嫌なら、もぉ、行かないよ」



そこであの人と出会ったの?



「この前、一緒にカフェにいた人
碧くんの彼女?」



「なんで?」



質問が質問で返ってきた



「違うの?
すごく美人だったしスタイルよさそうだった
碧くん理想高いって前に言ってたから…」



「あぁ…」



碧くん

答えたくないんだ



私は宙に告白されたことも

付き合ったことも

話したのに…



「碧くん、ズルい」



「なにが?」



「答えてよ
私の質問に」



「違うよ」



「なんだ…違うんだ

もっと美人なの?
碧くんの好きな人」



「もっと…美人でもないけど…」



「じゃあ、もっとおっぱい大きいの?」



「いや…
でも、もっと手に入らない人…」



「なんで?」



「彼女とか、彼氏とか、
そーゆーのじゃないから…」



碧くん

ごまかしてる?



今日も甘い匂いするよ



また会ってた?


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