ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
「倒れたって…マナ、大丈夫?」
孝弘さんだ。額に汗をにじませ、わずかに息も上がっている。かなり急いで駆け付けてくれたみたい。心配かけちゃったな。
「うん。もう平気。何だったんだろう、急にめまいがして。初音さんのショパンに酔ったみたい」
「姉ちゃんのピアノのせいか。時折、何かに取り憑かれたような演奏するからなぁ、姉ちゃん。
琴羽ちゃん、今日はもう連れて帰っていい?」
「あ、もうすぐ検査結果出るはずだからちょっと待ってて」
「そっか。琴羽ちゃん、付き添ってくれてありがとう」
「付き添いというか、ここで仕事してただけよ」
パソコンを畳み、琴羽さんはいつも通りの無表情で立ち上がった。そこへ、かなり急いでいる足音が近づいてきて、再びのドアノック。
「あぁ、孝弘くん来てたんだ。ちょうど良かった!」
水上先生まで額に汗をにじませている。急いできてくれたみたい。そんな水上先生に琴羽さんは眉をしかめた。
「病院長、廊下は走らないでください」
「走ってないよ。早足だよ。だって、早く知らせたくて。ハイ、丹下先生、これ。検査結果。
俺のカンが当たってた。おめでとう」
水上先生が手渡してくれた検査結果の紙。
妊娠を示す結果が記載されていた。
え、検査って、妊娠検査だったの!?っていうか、私、妊娠してる??
「産婦人科受診して。今、花音さんが定期検診中だから、その後だね。連絡してあるから」