お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません！~

「新婚旅行の邪魔をしないでくれるかな？ガキが。 俺の妻に指一本でも触れてみろ。命はないと思え」

信じられない低い声でそう言うと、彼は男性ふたりを睨みつける。
怒ってるどころじゃない……キレてる……ブチ切れだ！
怖い、怖すぎるよ航太郎さん！
普段あんなにへらへらにこにこしてるのに、そんな声どこから出してるんですか！？「さ、さーせんした！」

男性は顔を真っ青にして深々とお辞儀をし、そそくさと去っていく。

「おい！ 人妻じゃねーかちゃんと確認しろよ！」

「したわ！ あいつが何も言わなかったんだよ！」

ふたりの会話を聴きながら、航太郎さんがボソリと呟く。

「俺たちの部屋はスイートだ。 たかがエグゼクティブくらいでイキってんじゃねー。馬鹿が」

く、口悪っ！？
私はこの時、この人を怒らせてはいけないと強く感じた。

「大丈夫？ 翠。何もされなかった？」

くるりと振り向いた航太郎さんは、いつもの様子に戻っていた。
やばい！次怒られるのは私だ！ 言う事聞かなかったから、航太郎さんにも迷惑かけてしまって…絶対怒ってる！

「は、はい。 腕を掴まれたくらいで……こ、航太郎さん、ごめんなさい！ 黙って出ていったから、迷惑かけて―――ひゃっ！？ え、ちょっ……」

言い終える前に、くいっと腰を寄せられ、少し乱暴に顎を持ち上げられる。

「そうだね。あの店、メンズものばかり取り扱っているところだよ？ 何考えてるの？ まあ、目を離した俺も悪かったけど、翠には教えてやらなきゃいけないことがいっぱいあるみたいだね」

にこにこと微笑みながら言っているものの、目が全く笑っていない。
私は頬をひくひくと引き攣らせ、間近にある整った顔に心臓が早鐘を打つ。
なんだかとても、悪い予感がしていた。