捨てられ聖女は魔王城でスローライフを送る〜戻れと言われてお断りしたら、向こうから来るらしい〜
後ろ盾がないのも、不慮の事故で父母が亡くなったせい。聖女の勤めが優先と言われ、その葬儀にも出ることは叶わなかった。その悲しい思い出を咎められるのは、辛い。

聖女の能力が枯渇しようとしているのも、その過酷な十年間の任務を誠実に全うしたからではないか!

「ーーっ!」

反論をしようとして、その言葉をかろうじて喉の際で抑える。頭を垂れたその下で、きりきりと私は唇を噛み締めた。

反論したとて、利用価値のない私に待つのは、死か幽閉と言ったところだろう。

ところが事態は、知らぬ間に私の想定外の方へ進んでいたらしい。

「そなたには、魔王領との友好の証として、かの国へ行ってもらう。魔王は結婚していないらしいし、輿入れという形が良いかな。行き遅れに、国が嫁ぎ先を斡旋してやるのだ。感謝するといい。力は枯れかけたとはいっても聖女。その肩書に価値はあるだろう」

ニヤリと笑って、王子殿下は宣言する。

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