運命の推し
嬉しそうに周くんの話をする日向を見て、改めて思った。
あぁ、この子も青春を生きているのよね。
16歳。
まぶしいくらいにキラキラ輝く、青春の真ん中にいる。
……だけど。
日向は、部屋の中から出ようとはしない。
トイレやお風呂の時だって。
私たち家族にも気づかれないように、ひっそりと済ませているみたいだし。
もう返ってこない「今」を。
この子はどんな思いで、ここにひとりでいるのだろう。
「笑子ばあちゃん?」
いつの間にか考えこんでしまっていた。
「日向」
私は日向のベッドから腰を上げ、日向のそばまで行く。
白いテーブルのそば。
腰を下ろそうとしたら、日向が支えてくれた。
「何?どうしたの?」
日向の声を聞いて、ふと、我に返る。
どうして部屋にこもっているの?
どうして学校に行かないの?
お友だちはどうしたの?
……そんなこと聞いて、どうしようと思ったんだろう。
私に何かできることがあるとは思えない。
「日向の初恋って、周くんなの?」
慌てて別の質問をする。