運命の推し
「初恋?」
日向は困った顔をした。
我ながら「しまった」と反省した。
咄嗟に出た、苦しい質問だったけれど。
そんなことを聞いてどうするんだ、と心から思う。
「笑子ばあちゃんは?初恋って、いつ?勝也じいちゃんが相手?」
日向は質問に答えず、質問で返してきた。
私は、
「そうねぇ」
と、遠い目をして眼鏡を外す。
「初恋はお父さん……、勝也じいちゃんだったわねぇ」
「え!初恋の人と結婚ってあり得るの!?」
「あら、どうして?」
「だって、初恋は実らないっていうから……」
「あぁ、そうねぇ。でも私、結婚したわね。初恋の人と。不思議ねぇー」
ふふふっと笑ってみる。
日向は「いいなぁ」と、ニコニコした。
「私、生まれた時にはもう、勝也じいちゃんがいなかったから。どういう人なのか知らないんだ」
そう言った日向は、本当に寂しそうな顔をしていた。
「優しい人よ。それに強い人なの」
泣きたくなった。
この子は、知らないんだ。
お父さんに会えなかったんだ。
私は、日向を抱きしめた。