青、こっち向いて。
それから何度か言葉は交わした。
といっても、次はどこを曲がるとかこの信号を渡るだとかそんなことばかりだったけど、
城田くんは私の住むアパートまで送ってくれた。
「あの、今日、助けてくれてありがとう」
お礼を忘れていたことを思い出して、別れ際に言うと、彼は少しの無言の後、「べつに」と、そっけなく返事をした
正直、絡まれた不良達を威嚇している時の城田くんは本当に怖かった。助けてもらっているはずなのに私まで凄まれているようで恐怖で変な汗をかいた。
「もう夜に一人で出歩くなよ」
「…うん、善処します」
「次は知らねえから」
何度も面倒ごとに巻き込むのは、私の方も申し訳なくてそんなことできない。
コクコクと首を縦に振る
だけど、夜、一人で出歩くなって言うのは、守れそうにないかな
夜出歩くのは私の意思じゃないから。
次がないことを祈ることしか、私にはできない
「あとこの本」
手渡された書店の袋を受け取ると、城田くんは少し微笑んで言った
「結構面白い」
あ、さっき拾ってくれたときに、タイトル見たのかな
そんなことよりも、城田くんの微笑んだ顔が思ったよりもずっと優しくて、かっこよくて、見惚れた
「…また明日」
パッといつもの無表情に切り替わって背を向ける城田くんに、私なりに精一杯声を張る
「うんっ、また明日ね!」
振り返ることはなかったけど、手を上げてヒラヒラと振った背中を、見えなくなるまで見つめていた。
どうしよう
私、城田くんのこと
好きになったのかもしれない
たまちゃんと今日した会話を思い出しながら、「矛盾してる」と、一人つぶやいた。