青、こっち向いて。
一人、また一人とクラスメートが登校してくるようになる頃には、教室の掃除は全て終わっていて、私は席について昨日購入した本の続きを読む。
物語は、主人公と相手の子がすれ違いを始めたところで、たまちゃんが学校に来た
…なんかすごく大きなお弁当の袋を手に下げてるけど、今日は豪華なお弁当なのかな…?
「あっちゃんおはよ! 聞いて、まじでむかつくの」
「おはよ、たまちゃん。…あの幼なじみの子?」
「よくわかったね。あいつほんとありえないのよ、昨日あたしのスマホにこんなふざけたステッカー貼りやがった」
ほら、と見せられたスマホの背面には、タマと文字の入ったゆるい猫の絵のステッカーが貼られていた。
たまちゃんには小学校からの付き合いの幼なじみがいるらしくて、時々その子の名前が上がる。
確か、名前は…
「シバのやつ…。だからあたし柴犬のステッカー探してあいつのスマホに貼り付けてやんの」
ざまあみろ、と鼻を鳴らすたまちゃんに苦笑を返す。
シバって、たまちゃんは呼んでいるけど、名前には確か一文字もかすっていなかった。
香椎くん、だったかな。
一度だけ、たまちゃんに紹介されて顔を合わせたことがあるけど、くりっとした丸い目に、人懐っこい笑顔が特徴的な男の子。
なんでシバって呼んでるのか聞いたら、たまちゃんが昔飼っていたペットの柴犬の名前が“シバ”で、その子にそっくりだからって言っていた。
確かに人懐っこい笑顔が犬みたいで少し笑ってしまった覚えがある。
「あれ、城田ってもう来てるの?」
たまちゃんの口から出てきた名前に、体がビクッと揺れた。
たまちゃんの視線の先には城田くんの机。カバンが置いてあるのを見たのかな