青、こっち向いて。
何回かやりとりをしたあと、たまちゃんが私を見上げてくる
「しばらく、シバが送り迎えしてくれるって」
「ほんと? 香椎くんいるなら安心だね」
「…ほんと、悔しいことに安心している自分がいる」
悔しい、と言いつつ、そんな様子は微塵もなく、本当に安心したような表情をしていて、相当不安だったことがわかる。
でもその不安な気持ち、私も少しわかる。
香椎くんが送り迎えしてくれるって聞いて私も安心した。
…あれから、城田くんとは特に話したりすることもなく時間だけが過ぎていく毎日。
もちろん、今まで通り挨拶は交わす。
でもやっぱり私が掃除をしている間はいなくなってしまう。
連絡先を交換したはいいけれど、なんの話をしたらいいかわからなくて、文字を打っては消し、結局メッセージを送るのをやめてしまう。
だからまだ一度もメッセージを送っていない。
「ねえ、あっちゃんは最近どーなの」
お弁当のたまご焼きを半分に割りながら、投げかけられた質問に首を傾げる。
その質問はいままさに、頭の中を占めていた人のこと。
どーなの、と言われても、なにもない。
城田くんは、もともと私が関わるのあんまり好ましく思っていないような感じがするというか、だからといって私が城田くんに関わらないよう行動をセーブしたら本当に関わりがなくなってしまう。
「…脈、全然ない」
口にして、腑に落ちた。
そうだ、脈が全然ない。朝、おはようと挨拶を交わすだけのクラスメート。それが私。
口にして、自覚して、軽く落ち込む。
「まあ…なかなか手強そうだもんね。なんか何考えてるか謎じゃない? そもそも彼女がいるかどうかも聞いたことない」
彼女…。
そ、そういえば、彼女がいるのかどうか私も知らない。
失念していた。そうだ、もし彼女がいたらどうしよう