触れないで、杏里先輩!
ゾワリ……


そう考えると全身が鳥肌に包まれて。

私は白線の手前に居たが、後ろに勢いよく後退り。

俯くと震えている自分の足が見えた。

私は乗り込むことも出来ずに、その電車を見送った。

とりあえず端に行こう。
私は人混みを避けて、ベンチに座り、少しでも人が減るのを待つことにした。


「坂井さん、帰らないの?」

「え?」


突然名前を呼ばれて驚いて顔を上げると、首を直角に曲げないと顔が見えないほどの高身長の男子、北川君だった。


「あ、私は、人が減るのを、待ってから、帰るのでっ」

私は首の角度を緩め、視線を彷徨わせながら返す。
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