触れないで、杏里先輩!
「でも坂井さん、杏里先輩には凄く心を許してるように見えるから」

先程まで眩い笑顔だったのに、今は神妙そうな顔になっている。

私、何か変こと事、言っちゃった?

どうしてそうなったか分からない私は戸惑い、目を泳がせる。

「そ、それは、杏里先輩が、昔馴染みで、気心知れた人だからだと、思うっ」

「そうなんだ」

納得した北川君がまた眩い笑顔に戻ってくれたので少し安心した。
少しだったのは、この笑顔が心臓に悪いから。

「そ、そういえば、北川君は、な、何駅で降りるので、しょーかっ?」

会話で紛らわそうと口を開くが、動揺で辿々しい敬語に戻る。

「坂井さんの二つ前のM駅」

「私達、家が近いんですねっ」

どうやら隣の学区のようだ。
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