触れないで、杏里先輩!
その時、電車が速度を緩やかになるとアナウンスで到着する駅名を告げると心が騒ついた。
次の駅は商業施設が建ち並んでいて、乗車率が高いはず。
電車が完全に停まると私は思わず窓の外、乗り込んでくる人達へと向けた。

十人は見える。

思わず辺りを見渡すと電車の中はいつの間にか座席は埋まっていた。

恐怖で背筋がヒヤリ。

電車の扉が開く。
スーツを着たサラリーマンも見える。

私の前に来たら、どうしよう!

思わず俯くと、不安と恐怖で足が小刻みに震えているのが見えた。


「坂井さん、大丈夫」


そこに優しいトーンが聞こえてきた。

北川君を見ると、やっぱり優しい顔をしていた。
私の不安を察知したらしい。
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