触れないで、杏里先輩!
「俺が守るよ」

その言葉に味方が居ると安心したのか、足の震えが止まってくれた。


「最近の若者はなってない!」


そこに突然、荒げた声がこちらに飛んできた。

顔を向けると、北川君の前に少し背中の曲がった白髪の不機嫌顔のお爺さんが立っていた。

「すいません。こちらどうぞ」

北川君が紳士的に立ち上がりながら席を譲った。
怒号に怯えて立ち上がれず、図々しく座る自分が情けなくなる。

「鞄も退けろ!もう一人座れるだろう!」

静かになると思ったお爺さんが今度は北川君が私の横に作ってくれたバリケードを指差して叫んだ。

これを退かしたら……私の横にこのお爺さんが座る?
それか違う誰かが座りにくる?

考えるだけでゾワゾワと身の毛がよだつ。
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