触れないで、杏里先輩！
「すいません。彼女、男性が苦手で図々しいことを言いますがこれは退かせません」

怒り狂うお爺さんに、鎮まるように冷静に返す北川君。

「図々しいにも程がある！」

だがお爺さんの怒りは増長していく。

私はどうすれば良いか分からず、アワアワするしか出来ない。


「そこのお爺さん、隣の車両の優先席空いてますよ」

そこに前の座席から声が飛んできて。
見ると、見知らぬ五十歳くらいのおっとりした雰囲気のおばさんだ。

「まだ空席あるんだから良いじゃないですか。女の子怯えていますし、それに周りの方も皆さん見てますよ？」

穏やかに追加されたその言葉にお爺さんは慌てた様子で辺りを見渡したので、私も釣られて見渡した。

おばさんの言っていた通り、かなり注目を浴びていたようで、複数の視線がこちらに向いていた。

するとお爺さんは目をオロオロさせると何も言わずに逃げるように隣の車両へと移って行った。
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