愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「もしかして、浮気がバレたとか」
「浮気なんかしてねえし」

「綾星がそう思ってもねー、こうやってかわいい秘書が手作りの朝食を用意するような仲だと、奥さんだっておもしろくないと思うよー」

「おい、俺と五月はなんでもないだろ」

 俺が朝食の用意を頼んだわけじゃない。
 朝は食べなくても構わないが、五月が『それはだめですよぉ』と持ってくるようになっただけだ。

 だが、ふと思った。
 もしかして、それで出て行ったのか?

 いや。それはないだろうと自問自答する。この専務室での朝の光景など、星光は知る由もない。

「だけどさ、秘書に用意してもらわなくたって、家で朝食とってくれば済む話じゃないか。星光さん作ってくれないわけじゃないんだろ?」

「まぁ、それはそうなんだが……」

 結婚して初めて迎えた朝。キッチンには味噌汁の香りが漂っていた。

『お食事はどうしますか?』
『俺のことは気にしなくていい』

< 16 / 211 >

この作品をシェア

pagetop