愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「透、この辺の店で待っていてくれないか。俺の分も同じものを頼んでおいてくれ」
「ああ、わかった」

 ちょうど目に付いた和食の店で透と落ち合うことにした。

 星光の後ろ姿はまだ見える。

 俺の知らないコートを羽織って、君はどこに向かうんだ。

 浮き足立っていたはずが、突然足かせを付けられたように、足取りが鈍くなる。

 氷室に会いに来たのか?
 だとすれば、何の用事で。

 罠にかける写真を彼に頼んだというのだから、会いに行くとしても不思議はないだろう。

 だが、もし離婚後の話をしに向かっているとしたら?
 飛翔さんが言ったとおり、星光も氷室もそのつもりでいるとしたら。

 このまま追いかけ、ふたりで会っているのを突き止めて、俺はどうする。

 どうしたらいい?

 ふいにお姫様だっこの写真が脳裏に浮かび、ぴくりと眉間にしわが寄る。

 あれはやり過ぎだ。
 氷室に一言苦情を言わなければ。言うだけじゃなくていっそ一発、二発。

「あら、綾星お兄ちゃん」
 突然の呼びかけにギョとして振り返ると、美々子がいた。

「わかったでしょ? 星光は氷室さんに会いに来たの」

 美々子は得意げにニヤリと笑う。

 なぜだ。なぜお前がここにいる。
 まさか、星光を尾行しているのか?

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