愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 氷室を頼るのは複雑な心境だが、星光の安全を優先すればわだかまりなど感じている場合じゃない。
 彼の警備会社のボディーガードは優秀だと定評がある。女性も強いらしく綾乃も絶賛していた。
 俺の大事な妻を必ず守ってくれるに違いない。


 社に戻り、仕事が一段落したところで伯母に電話をくれるようメッセージを送った。
 美々子を止められるのは伯母しかいない。伯母と弁護士で、美々子の暴走を止める方法を見つけてもらわなければ。


 持ち帰れる仕事以外は片付けて、早めにといっても八時だがマンションに帰った。

「あら、早かったですね」

「星光の顔を早く見たかったから」

 料理中だった彼女を後ろからそっと抱きしめる。

 無事で良かった。本当に。

 彼女の甘い香りを思い切り吸い込むと、ようやく気持ちが落ち着いてくる。

「綾星さん、危ないですよ?」

 星光はサラダを盛りつけているところだったらしい。使い捨てのポリ手袋をつけた手が所在なげに浮かんでいる。

「ああ、ごめんな。もうちょっとだけ」

 クスッと笑った星光は、あきらめたようにガラスボールの上に手を下ろした。

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