愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「そろそろ準備をしたいんですけれど、ハウスキーパーを雇います? 家事を引き継ぎたいし」

 ズキッと心が痛んだ。

「星光が出ていったら、俺は引きこもりになって餓死するからどうでもいい」

「もう。またそんなこと言って」

 星光は眉をひそめてあきれたようにため息をつくが、少しも大げさじゃない。

 本当だよ星光。君がいなくなったら、俺は生きている意味さえ見失うだろう。

 このひと月は、俺の人生で一番楽しかった。

 知らなければそれきりだっただろうが、君と過ごす幸せな時間を満喫した今はもう、過去の自分には戻れない。

 もしかして俺は間違っているのだろうか。

 嫌がる彼女を無理に引き止める俺も美々子同様、どうかしているのだろうか。

 星光の幸せを願うなら、離婚に応じるべきなのか。

 そんなのは嫌だ。

 食事の後かたづけをする星光を、また後ろから抱きしめる。
 俺の腕の中で最後の洗い物を済ませ、もぞもぞと動きながら「さあ、コーヒーでも飲みましょう」と、振り返った星光の頬を包んだ。

「なぁ、星光。俺が嫌いか?」

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