愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「氷室から聞いてすぐ、五條美々子が乗ったタクシーを付けてきた」

「じゃあ、もしかして近くにいたの?」
「ああ。車を降りてあの女のすぐ後ろにいたよ」

 そうだったのか。

「綾星がお前を守れるのか、見ていた」

 だから怖いって。

「なんだかんだ、悪くはないと思うぞ、俺は」

「お兄さまは綾星さんに甘いのね」

 離婚したいと私が言ったとき、兄はもっと強引に実家に連れ戻そうとするかと思っていた。でも、なんだかんだと見守る姿勢を崩さない。

 兄はそれには答えずニヤリと笑う。

「お前はどうなんだ。意地を張るだけじゃ幸せになれないぞ」

 図星をつれて胸が痛む。

 自分でもわかっている。もっと素直になれていれば、こんなにこじれなかっただろう。

 正直に思うとおりに気持ちをぶつけていれば、早い段階で綾星さんと分かり合えたかもしれない。

 でも、波風を立てるのが嫌で。

「なんだかんだいって、まんざらでもないんだろ?」

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