愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 上着のポケットから写真を取り出した五月は、テーブルの上に置く。

 写真にはホテルのエレベーターに乗る俺と五月が写っている。

 なるほどな。これが君の正体か。

 もしかしたら、星光から突きつけられるかもと思っていた写真を、君から見せられるとはね。
 飛翔さんから聞かされるまで、想像もできなかったよ。

 しかもこの場で出すという準備周到ぶりに思わず苦笑が浮かぶ。

「これって」と、透が写真を手に取った。

「会議の時のだろ? ってかこれ誰が撮ったんだ?」
 透もようやく異常に気づいたらしい。

「それで? 君の目的はなんなんだ」
 つとめて冷静に聞いてみた。

 金か? これっぽっちの写真では俺を強請れないとわかるだろうに。

「別に。専務があの澄ましこんだ女と別れれば済むだけですよ」
 五月の口元が不敵に歪む。

「あの人、私が別れてくださいって言った時、なんて言ったと思います?『あなた、私が彼と別れたら、五條家がどうなるかわかっているの?』だって。ははっ、何様のつもりなんだか。どうせ親の力のくせに。ああいう女大っ嫌い!」

「やめろ、妻を侮辱するのは俺が許さない」

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