愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 五月は驚いたように目をむいたあと、天を仰いでケラケラと笑い出す。
 絵に描いたような高笑いだ。

「ええ? 笑っちゃうわ、仮面夫婦のくせに。せっかくだから週刊誌にでも売っておいてあげるわよ。秘書にセクハラ強要ってね。また会社の株が落ちるかもねー」

「構わないよ。好きなだけ騒げばいい。ついでだから、君の亡くなったはずの両親や、ソープランドの元同僚に証言してもらって、ホスト狂いの実態やらをこの際全て公けにしよう」

 五月の目がみるみる大きく見開かれていく。

「家賃未払いでアパートから夜逃げしたこともあるそうじゃないか。俺の名前を出して備品の購入もしているそうだが、俺は君に手土産のチョコレートなぞ頼んだ覚えはないぞ」

 悔しそうに噛んだ五月の唇は今にも切れそうだ。

「ここまで言いたくはなかったよ。君は秘書として十分なだけの仕事はしてくれたからね」

 ようやく観念したのか、五月は無言で席を立った。

「待て。何か言うことはないか?」

「すぐ退職届を提出します」
「わかった」

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