愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「いなかったはずの両親と一緒にいる写真、ホストクラブで騒いでる写真の他にも、キャバクラ、風俗時代のとか、たばこを吹かしながらパチンコとかな。ずらーっと写真を並べて見せられたよ」

 思い出しただけでも頭が痛くなってくる。

『百戦錬磨の女だ。よく手を出さなかったな』と笑った飛翔さんの笑みは心底恐ろしかった。
 もし五月に手を出していたら俺は、豚小屋送りだっただろう。まじで。

 考えてみれば、そうなってもおかしくないシーンは幾度もあったと思う。

 残業続きでくたくたな夜更けのオフィスで、そっと夜食を置いてくれた時や、飲み会で酔った彼女を送っていった時。俺がもし結婚していなければ心は動いただろうか。

 そのときのシーンは浮かんでも、気持ちはよく覚えていない。

 星光が頭をよぎったか。それとも、いつも仕事で頭がいっぱいだった俺には、そんな気力がなかったか。

 少なくとも行動に出なかったのは事実だ。


「人間不信になりそうだ」と透が頭を抱える。

「それ俺のセリフだ」

「あ、あはは。そりゃそうだよな」

 慰めるように、透はぽんぽんと俺の肩を叩く。

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