愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 チッと舌打ちしたところで、タイミングよくインターホンが鳴った。

 星光かと一瞬ハッとしたが、画面に映ったのは妹の綾乃(あやの)で、カメラに向かって手を振っている。


「おじゃましまーす。土曜にお兄ちゃんがいるなんて珍しいねー。はーいお土産のケーキ」
「なんか用事か?」

「お兄ちゃんじゃないわよ。星光さんは?」
「いや、いない。コーヒーでも飲むか?」

 目ざとく離婚届を見つけた綾乃は、俺の手から奪い取った。

「何これ!」

 脱兎のごとく星光の部屋へ走り「うそっ!」と叫ぶ。

「お兄ちゃん! どういうこと?」
 戻ってきた綾乃の瞳は潤んでいる。

「さあな。選挙も終わったからここにいる必要がなくなったんだろ」

 星光の父は、衆議院議員、花菱一郎だ。

 先月の衆議院選挙でぶっちぎりのトップ当選だった。結婚の条件は五條家の影響力と会社の票だったのだから、俺が言った理由もあながち的外れではないはずた。というよりも――。

 そうか、それで出て行ったのかと、自分の言葉に納得しかけた。

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