愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
あなたの本心がどうあったとしても、私も彼と離婚するんですよ。
そう思いながら見つめ返すうち、カランカランとドアベルの音がした。
「どうした?」
氷室さんが顔を出した。
「なんだ、ジュジュか」
ルビーの彼を知っているのだろう。氷室さんはジュジュと呼んだ彼の耳元で何事か囁いて、折った紙(恐らく一万円札)を彼のポケットに入れた。
「行こう」と彼に肩を抱かれてすれ違っていく間、彼女はずっと私を睨んでいた。
「星光、悪かったな。さあどうぞ入って」
平日の夜のせいか半分ほど空席があった。
促されたカウンターに腰を下ろすと、隣に氷室さんが座る。
「何にする?」
「食事がてら白ワインを」
「了解」
氷室さんは慣れた様子でカウンターの中に指示をする。
お通しのスモークチーズとワインを受け取り、手際よく私のグラスに注いでくれた。
「ありがとうございます」
「大丈夫? 彼女知ってる子だった?」
「――ええ。五條の秘書さんです。もしかすると既に退職したかもしれませんけれど」