愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~

 あなたの本心がどうあったとしても、私も彼と離婚するんですよ。

 そう思いながら見つめ返すうち、カランカランとドアベルの音がした。

「どうした?」
 氷室さんが顔を出した。

「なんだ、ジュジュか」

 ルビーの彼を知っているのだろう。氷室さんはジュジュと呼んだ彼の耳元で何事か囁いて、折った紙(恐らく一万円札)を彼のポケットに入れた。

「行こう」と彼に肩を抱かれてすれ違っていく間、彼女はずっと私を睨んでいた。


「星光、悪かったな。さあどうぞ入って」

 平日の夜のせいか半分ほど空席があった。
 促されたカウンターに腰を下ろすと、隣に氷室さんが座る。

「何にする?」

「食事がてら白ワインを」

「了解」

 氷室さんは慣れた様子でカウンターの中に指示をする。

 お通しのスモークチーズとワインを受け取り、手際よく私のグラスに注いでくれた。

「ありがとうございます」

「大丈夫? 彼女知ってる子だった?」

「――ええ。五條の秘書さんです。もしかすると既に退職したかもしれませんけれど」

< 92 / 211 >

この作品をシェア

pagetop