愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 よりによって今日、彼女と出くわすとは。

 彼女から親し気に話しかけられる間柄ではないので無言でいると、さすがに強い女性である。ジッと私を見たまま近づいてくる。

「ねぇ奥さま、奥さまの連れってことで私たちも入れてくださいよ」

 彼女の連れの男性は、死んだような目をした綺麗な顔の若い男の子だった。
 耳たぶで光る本物のルビーが印象的である。まるで生き血のよう……。

「私とは話せませんか? 口が汚れるとか?」

 顎を上げた彼女は挑戦的な目をして口角を歪める。

 別に口が汚れたりはしないけれど、強いて言うならば言葉を失っているというか、この状況で何を言ったらいいのかわからない。

 バーテンが困ったように「お客さま、そういうのは困ります」と割って入ろうとすると、ルビーの彼が立ち塞がった。

 彼女はフッと鼻で笑い挑発するように私を睨む。開き直っているのか私に離婚を迫った過去などなかったよう。
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