一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
タクシーを降りて寮に入り、エレベーターで三階にある自分の部屋に帰ろうとしたら、ドアの前でスーツ姿の男性が立っていた。
背が高くスラッとしている。
影になっていて顔がよく見えないが、なぜか身体がゾクッとした。
″早くここから去れ″と私の脳が警鐘を鳴らす。
だが、相手が誰なのか気になって自分の部屋にゆっくりと向かう。
すると、私の足音に気づいた男性と目が合った。
「やあ、お帰り。久しぶりだな、山本。いや、結婚するんだから雪乃か」
黒髪のサラサラヘアに目元には小さな黒子。目は切れ長で鋭い眼光をしたこの男を私はよく知っていた。
記憶より少し体型ががっしりしているけれどこの男性は私がこの世で一番会いたくない人だった。
悪魔のようのニヤリとする松本を見て身体が震え出す。
怖かった。
恐ろしかった。
高校時代のことがフラッシュバックして、激しい頭痛にも襲われた。
逃げなきゃ!
踵を返して停まっていたエレベーターに飛び込むが、松本も追ってきた。
「待てよ!」


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