一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
恐怖に怯えながら【閉】ボタンを連打する。
お願い、閉まって!
私の願いが通じたのか、ギリギリのところでエレベーターの扉が閉まった。
だが、まだ安心はできない。
松本は階段で追って来るかもしれない。
エレベーターが一階に着くと、隣の階段から誰かが駆け足で下りてくる音が聞こえた。
このままだと捕まる。
松本に会いたくなかった。
彼の顔を見る勇気すら今の私にはない。
急いで寮を出て、後ろを振り返らず必死に走った。
途中足が絡んで躓いたが、痛みを堪えてまた走る。
息が苦しくても止まる訳にはいかない。
近くの駅にたどり着き、なにも考えずにすぐ来た電車に乗る。
電車の扉が閉まって動き出すと、椅子に座って胸に手を当てた。
これで追っては来れない。
ひとまずホッとしたが、今日はもう家には帰れない。
まだ松本がいるかもしれないと思うと身体がブルッと震えた。
どこへ行けばいいのだろう。
そう考えて頭に浮かぶのは怜の顔。
今はただ彼に会いたい。
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