一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「待った。なにかあったから来たんだろう?」
顔を見たら彼女の目から涙が溢れ落ちていて、ただごとではないと思った。
「……帰る」
俺の手を外して離れようとする雪乃をギュッと抱きしめた。
「帰さないよ」
耳元で優しく告げると、彼女が嗚咽を漏らす。
その身体は震えていた。
一体なにがあったのか。
今日のお昼に具合が悪くなったのも気になる。
渡辺に雪乃のことを調べてもらったが、彼女はいろいろ問題を抱えているようだ。
彼女の実家は福井で父親は昭和から続くメガネ会社『山本眼鏡』の社長。会社は従業員八十人程の中堅企業だが地元ではその名をよく知られている。
母親は彼女が大学生の頃に交通事故で他界。
三つ上の兄がいて、副社長をしている。去年までフランスで修行していて、父親の会社を継ぐために戻ってきたらしい。
雪乃は高校三年の時に不登校になり、その数カ月後に上京。優等生でいじめにあったという噂もなく、不登校の理由についてはわからない。上京後は叔母の家で暮らし、大学も就職も東京で福井には滅多に帰らないそうだ。
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