一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
もう彼女とは五年の付き合いになるが、今年の祖母の葬儀以外で福井に帰省するという話を聞いたことがない。
『山本は年末年始どうするの?』
正月休みの予定を聞くと、いつも雪乃は決まって『寮でゴロゴロする』と笑って答える。
東京に出てきて福井に滅多に帰らないことから考えると、福井にいたくない理由があるのだろう。
家族と揉めているのか、それともなにか他の原因があるのか。
渡辺の話では、雪乃の父親の会社は経営状態が悪いにも関わらず、新しいブランドを出して東京への出店を計画しているらしい。
その金がどこから出ているのか今渡辺に調べてもらっているところだ。
しばらく雪乃の背中を撫でていると、落ち着いたのか静かになった。
「うちに帰ろう」
雪乃の顔を覗き込んで涙を拭い、マンションに入る。
だが、彼女の歩き方がおかしかったのでエレベーターホールの前で確認した。
そう言えば会った時も足を引きずっていたな。
「足……どうした?」
雪乃の右の足首がパンパンに腫れている。


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