一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
街中で会ったのではなく寮でその人物に会ったのだろう。
だとしたら家族?
「会いたくない人って?」
詳しく聞いたら、彼女はその瞳に暗い影を落とした。
「……高校の同級生。まさか東京にいるなんて思わなくてビックリして……なにも考えずに怜のところに来ちゃった」
高校の同級生?
それって彼女の不登校と関係があるのだろうか?
雪乃の寮には管理人がいて、社員以外の者は入れない。例外は社員の家族だ。
同級生がどうして寮の中に入れたのだろう。
家族だと嘘をついた?
「それは正しい判断。高校の同級生って男?」
相手がわかれば雪乃から遠ざけたい。
彼女がこんなに取り乱すなんて只事ではない。
同級生の情報をもっと聞き出そうとしたら、彼女が自分の肩を抱いて震え出した。
「……うん。でも……もういい? これ以上思い出したくない」
「いいよ。もう思い出さなくていい」
これ以上聞くのは無理だ。
雪乃を守るように抱きしめる。
彼女の不安や苦しみを全部分けてほしい。
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