一晩だけあなたを私にください～エリート御曹司と秘密の切愛懐妊～

８、思いがけない妊娠

「だいぶ腫れが引いたな」
私の捻挫の痕を見てホッと胸を撫で下ろす彼。
松本に再会してからあっという間に十日経った。
その間ずっと怜の家にいて寮の自分の部屋には一度も帰っていない。
あの悪夢の夜、かなり動揺していたこともあって松本のことを怜に話してしまった。
今思い返すと失言だったと思う。
でも、怜はもう松本がどういう人物なのか追及してこない。
忘れていればいいのだけれど……。
彼には松本のことを知られたくない。
足の怪我は治ってきたが、心の不安……いや恐怖は増すばかりだ。
あと、一週間もすれば福井に帰らなければいけない。
「うん。今日からは普通に電車で会社に行ける」
やっと自由に動けると思ったのだけれど、この十日間ですっかり私の保護者と化した怜に却下された。
「ダメ。今日もタクシーで行くこと」
「タクシー代がもったいないよ」
不満を口にする私の肩を彼はポンと叩いて宥める。
「駅の階段で転んで怪我を悪化させるのに比べたらタクシー代なんて安いものだ。保険と考えるんだな」