一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「貧乏性だから無理だよ。怜は今日大阪で打合せでしょう?」
あまり揉めたくなくて話題を変えたら彼が私をじっと見つめた。
「ああ。一緒に出勤できなくて寂しい?」
「全然」
澄まし顔で答える私を見て怜はわざとガッカリして見せた。
「つれないな」
「だってずっと一緒に出勤してたら偶然バッタリ会ったって言い訳が通用しないでしょう? 社長に会った時は心臓止まるかと思ったよ」
足を引きずる私に怜が付き添っていたものだからうちの会社の社員の視線を強く感じた。
知ってる人には『沖田さんと同伴出勤で羨ましい』なんてからかわれて言い訳するのが大変だった。
最悪なことに怜の父親でもある社長にも見られて、もう消えたいと思った。
挨拶も出来ずにいる私の横で怜は『俺のせいで捻挫したから、お詫びに送迎してるんだよ』と平然と社長に嘘をついた。
社長は『ああ。なるほど。話は聞いていたが、こんな美人だったとは』と私に優しく微笑んだので、社長の発言にいささか引っ掛かりを覚えたけれどホッとした。
怜は心臓に毛でも生えているんじゃないかって思う。

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