一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
13、彼女を必ず連れ戻す
「山本さんは今日休み? 昨日の歓送会も来てなかったけど」
送別会の次の日の四月一日、始業時間時間にふらっと部長室にやってきた渡辺が俺に尋ねた。
「いや、休みじゃなくて退職したんだ」
パソコン画面から顔を上げてそう答えたら、彼は目を丸くした。
「退職? ええ〜!」
「知ったのは昨夜だったけど、なんとなく辞める気はしてた」
窓の外の雲を見ながら呟くように言うと、渡辺は少し不機嫌そうに言った。
「知ってたなら言ってくれよ。部の他の連中だって別れの挨拶したかっただろうに。どこかに転職?」
「福井の実家に帰った。高校の時の同級生と結婚するために」
俺の返答を聞いてさらに驚いた彼は素っ頓狂な声を上げた。
「け、け、結婚〜!」
「シッ! お前声デカすぎ。部長室で叫ぶなよ」
人差し指を唇に当てて渡辺を注意する。
「わ、悪い。でも……お前、他の男に取られていいの? 山本さんのこと好きなんだろ?」
真剣な目で俺に問う彼にニコッと笑ってみせる。

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