一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
囁きに近い、酷く狼狽えているようなその声。
俺と彼女は抱き合った状態で横になっている。
目を開けず、そのまましばらく様子を見ることにした。
「昨日は……こたつのお店で鍋を食べて……それから……それから……全然覚えてない。えー、どうするのこれ?」
目を閉じていても彼女の視線を感じる。
かなりパニックになっているようだ。
「なんとかベッドを出ないと……」
彼女がもぞもぞ動いて俺の腕の中から抜け出そうとしたので、「うーん、寒い」と寝ぼけたふりをしてさらに強くその華奢な身体を抱き締めた。
俺の腕の中で数十秒固まる雪乃。
なにも声を発しないところをみると、俺が起きたかと思ってビクビクしているのだろう。
しばらくして、「よかった。寝言……か」と呟く彼女の声が聞こえた。
さあ、これからどうする、雪乃?
俺に抱かれていてはベッドを抜け出すことすらできないよな。
彼女は俺の腕に手をかけて、抱擁を緩めようとする。
雪乃に顔を寄せ、その頬にチュッと軽く口付けたら、彼女の身体がビクッと動いた。
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