視線が絡んで、熱になる【完結】
これが恋だと、人を好きになったのだと嫌でも認識せざるを得なかった。
琴葉は何も言わなかった。
そしてもう一度柊を見上げる。大粒の涙が頬の輪郭をなぞるように落ちていく。
彼女は悲しそうに、切なそうに顔を歪ませながら立ちあがり走り去った。

それ以降、彼女の姿を大学内であまり見かけなくなった。

が、次に見かけたときは“以前”の彼女に戻っていた。蓮によると、やはりテニスサークルで琴葉と付き合うというゲームのようなものをしており、それが琴葉本人にも伝わったのではないか、ということだった。

喋ったこともない後輩を探して(蓮に教えてもらった)初めて春樹(琴葉の元カレ)を見た瞬間、殴りかかろうした柊を蓮が必死に止めてくれたおかげで事件になることはなかったがその件はずっと柊の胸に残り続けていた。

そして、ちょうどゼミで忙しくなっていた柊は琴葉と関わる機会を失っていく。

気づくと卒業を迎えていた。就活も成功し、無事に就職もできた。
ただ一つ、琴葉のことだけが柊にとって心残りだった。







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