エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
 私たちは車から降りて、小高い場所へ足を運ぶ。月城さんは突として立ち止まり、それほど遠くない黒いオフロード車が数台いる方へ顔を向けた。

「ここへはほかのツアー会社も来るのか?」

「たぶん……」

 離れた場所にいる数台の4WDのなにが気になるのだろう……。

「太陽が沈んじゃうわ。早く行かなきゃ」

 サラサラの砂に足を取られながら上まで登り、砂漠をオレンジ色に染めていく光景を眺める。
 この景色を好きな人と見たいと、前回来たとき思ったのよね。好きな人か……。

 月城さんは私の手を握り、じっと沈む夕陽を見ている。

 彼と一緒にいるときは始終ドキドキさせられている。こんなふうになった経験がないから、好きなのだと思う。

 けれど彼はあと十日で日本へ帰るのだ。

 それまでにハーキム氏にあきらめてもらわなければならないのに、現状はわからない。

「いつ見ても素敵だったわ」

「そうだな。なかなか見られない美しさだった」

 月城さんも気に入ったのだと思うと、笑みが浮かぶ。

 私たちは乗ってきた車に戻ると、同じツアーの運転手数人が集まっていた。

「どうしたのかしら?」

「さあ?」

 月城さんが運転手に尋ねると、「エンジンがかからなくなった」と困り果てた顔になる。

「見せてもらえますか?」

 月城さんは運転手に断り、開けられたエンジンルームを借りた懐中電灯を向けて見始めた。
< 47 / 86 >

この作品をシェア

pagetop