君は残酷な幸福を乞う
それから、ランチにイタ飯屋に来た二人。
向かい合って座り、琉軌はひたすら若葉を見つめていた。
若葉はメニューを見ながら、琉軌に問いかけた。

「琉軌」
「んー?」
「ここも、貸しきり?」
「フフ…当たり前!」
「琉軌って、何者?」
「人間だよ」
「それはわかってるよ!
水族館を貸切にしたり、ここだって……
こんなことまで、できるようになったの?」

「うん…たいがいのことは、俺の一言で動かせるよ!」
「琉軌の世界のこと、わかってたつもりだったけど……わかってないのかも?私……」

「わからなくていいんだよ。
若葉は知る必要がない。
若葉は俺の傍にいて、今回みたいに甘えてくれたらいいんだよ……!」
頬杖をついて、若葉の頭を撫でる琉軌。

「琉軌は?」
「ん?」
「琉軌も、私に甘えて?」
「え?俺はいいよ!
だって俺は若葉に、かなりのワガママ言ってるから」
「ん?ワガママ?」

琉軌は頭を撫でていた手を、そのまま頬に移し口唇をなぞった。
「だって……俺は若葉の一番欲しいモノを与えてあげられないのに、一生傍に置いておこうとしてる。
これ以上ないワガママだろ?」

「確かに(笑)」
フッと笑う、若葉。
「可愛いなぁ、若葉。
ずっと見てられる……
だから、手放せないんだよ……?」

頬を撫でている琉軌の手に、更に頬を擦り寄せた若葉。
「ねぇ…甘えてみてよ?」
「だから、俺はいいよ!」
「いいから!」

「…………そうだな…じゃあ、こっち来て?」
「うん」
若葉は立って琉軌の前に立った。

「ここ!座って?」
琉軌は自身の膝の上を叩き、軽く若葉の手を引いた。
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