君は残酷な幸福を乞う
「うん…」
若葉は琉軌の膝の上に跨がった。
すると、若葉に抱きついた琉軌。

「幸せ…」
「え?こんなのが、幸せなの?」
「うん、若葉の重みと匂い。
それだけで、俺は生きていける……!」
「そうなの?
フフ…変なの~!」
「変?」
「だって施設にいる時、琉軌言ってたでしょ?」
「ん?」

「俺は“世界の王になる”って!」
「うん、言ったね」
「そんな人が、私に抱きついて“幸せ”なんて……
変でしょ?」
「そうだね」
「いつも世界を見ていた琉軌が、たかが私一人にこんなに執着するなんて……」

「それは違うよ!!」
「え?」
それまで若葉の胸に顔を埋めていた琉軌。
バッと顔を上げた。

「若葉は特別だよ。
若葉だけは、俺に甘えることができる。
俺に意見することも、俺を笑わせたり、生かすことも殺すこともできるんだよ。
もう俺はね……
ほぼ、この世界の独裁者みたいなもんなの。
だから、誰も俺を動かせない。
でも若葉だけは、俺を好きにできるんだよ。
意味…わかるよね…?」

「そう…
私、凄いんだね!
世界の王様の琉軌を好きにできるなんて!」
「フフ…そうだよ!」

少し琉軌を見下ろし、琉軌の頬を撫でる若葉。
「琉軌は、私をどうしたい?」

「ん?
そうだなぁ。できることなら、マンションに閉じ込めて誰の目にも触れさせたくない。
そうすれば俺は、安心して仕事ができるから」
「でもなぁ。琉軌、不定期にしか帰ってこないからなぁ。結構、寂しいんだよ…!」
「そうだね。だから、そんなことしないよ。
ただね、毎日気が気じゃないんだよ!
もしかしたら、職場で苛められてないかな?とか、男に声かけられてないかな?とか、送り迎えは団がしてるけど、事故にあってないかな?とか…」

「プッ…!!琉軌、仕事中に私のことばっか考えてるぅ(笑)!」
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