君は残酷な幸福を乞う
消徐
「いい?ここで、おとなしくしててね!
どうしても外に出たいなら、団をつけるんだよ!」
「うん、わかった」

「ん。じゃあ…三時間位で帰ってくるからね!」
「うん。行ってらっしゃい」
頭をポンポンと撫でて、出ていった琉軌。

若葉は、閉まったドアをジッと見つめていた。

「三時間なんて、すぐだよ!」
団が声をかけてきてくれる。
「違うの……」
「ん?若葉?」
「琉軌って、二人いるの?」
「は?
琉軌が二人もいたら、恐ろしいよ(笑)?」
笑いながら、キッチンに戻る団。

「うん…そうだね。
でも二人いるよ、琉軌。
いつも優しくて、微笑んでばかりの琉軌が時々……
鋭い目になって、私を捕らえたみたいに動けなくするの。
琉軌の中に、二人いる。
二重人格なのかな?」
団に続いてついて行きながら、言った若葉。

「フフ…そうゆうことかぁ。
だったら、もっといるよ!
琉軌の中に!」
「まだいるの?琉軌って!」
目をパチパチさせて、団を見上げた。

「うん、仕事中の琉軌見たら、きっと若葉もっとびっくりするよ?」
「え━━━━━」

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マンションを出た琉軌。
その表情は、若葉に見せる二つの表情のどちらとも違う。
怒っているように威圧感を出し、誰も近づけさせない雰囲気を醸し出していた。

琉軌には若葉以外誰も踏み込ませない、間合いがある。
瑞夫や団さえも、踏み込めないのだ。


瑞夫が車の後部座席のドアを開けた。
乗り込みながら、琉軌が口を開く。
「瑞夫、気づいてる?」
「あー、そこの角だろ?団には伝えてる」
「そう。若葉を外に出させるなよ」
「当たり前」

実は今朝外に出てからずっと、誰かにつけられている琉軌。
もちろん最初から気づいていたが、若葉が一緒だった為安易に手を出せなかったのだ。

「で?あれ、誰?」
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