君は残酷な幸福を乞う
「ほら、◯◯組の……」
「あーいたね」
「若葉を狙ってる」
「バカなクズか」
「そうだよ。組長を亡くして途端に力がなくなったからね。琉軌を恨んでるんだよ。
ごめんね、すぐに消そうとしたんだけど、若葉がいたから…でも大丈夫。今日中に消去するから」

運転中の為前を見ながら、淡々と話す瑞夫。
琉軌も窓の外を見ながら、淡々と答えた。

「ほんとバカなクズには呆れる。
若葉は俺の弱点だと本気で思ってるんだから。
俺の弱点は“若葉”じゃないのに……」
「フフ…そうだな」

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ホテル最上階のスイートルーム。
チャイムを鳴らすと、中から黒服の男がドアを開けた。
「お待ちしておりました、王様」
「ん」

中に入ると琉軌よりも二回り以上は上であろう人間が、ソファに深く座っていた。
そして琉軌の存在に気づくと、スッと立ち上がり頭を下げた。

「この度はお忙しいところご足労いただき、ありがとうございます」
「毎日ご苦労様、大統領」
「いえ…王様の忙しさに比べたら、私等……」
向かいのソファに琉軌が座り足を組むと、総理も腰かけた。

「で?今日は?」
「一人…消してほしい人間がいます」
「ん。いいよ、誰?」
「おい」
総理が後ろに控えていた男に、声をかける。
「はい。
こちらの女です」
一枚の写真を、テーブルの上に出した。

「………」
「よく、ご存知ですよね?王様は」

その写真に写っていた人物は、琉軌と若葉の唯一の家族とも言える女性・李々子の姿だった。

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