君は残酷な幸福を乞う
密接
次の日の朝。
若葉が目を覚ますと、既に琉軌はいなかった。

「仕事か……」
若葉はゆっくり起きて、リビングへ向かった。

「おはよ。若葉」
琉軌の部下・栄田 団が朝食の準備をしていた。

「おはよう。団くん。
琉軌は?仕事行っちゃったかな?」
「うん、今朝早くに」
「そう……」
「でも、今日は帰って来れるって言ってたよ!」
その言葉に、自然と笑顔になる若葉だった。

ダイニングテーブルで一人で朝食をとり、仕事に行く準備をしてダイニングに向かう。

「団くん、準備できたよ」
若葉が声をかけると、キッチンで片付けを行っていた団がニコッと微笑んだ。

「じゃあ…行こうか」
エントランスに一緒に向かい、
「じゃあ、車を回してくるね………」
と言って、団が裏に向かった。

団は琉軌と若葉の家政婦のような、執事のようなことをしていて、琉軌や若葉の身の回りの事を全て団がおこっている。

瑞夫や団は、琉軌の暴走族の時からの部下で今や一番信頼できる人間だ。

若葉の職場の裏に着くと、団が後部座席を開けてくれる。
「若葉、着いたよ」
「ありがと」
「じゃあ、またね!」
団が運転席に乗り込んだ。

それを見送り、会社に入った。
「おはよう!池内さん」
「おはようございます!」
「あの運転手さん、彼氏じゃないよね?」
「へ?違いますよ」
「だよね?もっと背が高い人だったなぁって思ってたんだ」
「あ、そうですね。
………見られてたんだ……」

あまり琉軌のことは、知られたくない若葉。
だからなるべく、送り迎えの際は職場の裏や少し距離をおいた場所にしてもらっているのだ。
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